2013年09月05日
遠野秋彦の庵小説の洞 total 1769 count

三百字小説『怪談・娼婦の味噌汁』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 世の中には、恐怖の味噌汁という怪談がありますが、それとは別に娼婦の味噌汁という怪談もございます。

 それはそれは別嬪の若い魅力的な娼婦が近づいてきて言うわけですよ。

 「あなたと夜明けの味噌汁を飲みたいわ」

 そこで、男はたいてい鼻の下を伸ばして 「君の手作りなら何杯でも飲むよ」なんて言いながら付いていくわけですな。

 娼婦と男は朝まで楽しい時間を過ごすわけですな。

 そして、夜が明けるとついに娼婦の味噌汁タイムに突入します。

 あまりの素敵な夜に、男は何杯もおかわりして味噌汁を飲むわけですな。

 そこで娼婦がニコニコして言うわけです。「1杯10万円の味噌汁を10杯も飲んでくれたお客さんはあなたが初めてよ」

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦